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予防・広報

火災の無い安全な街づくりを目指して
隠岐島町村組合消防本部(島根)

 

当本部は、西郷町を拠点として布施村、五箇村、都万村及び西ノ島町、海士町、知夫村の三町四村で構成され、昭和四八年一〇月一日に発足した。現在は、一本部、一署、三出張所に職員六四名が配置され、圏域面積三四六km2、人口二七、〇〇〇人の島民が、安心して暮らせる「火災の無い街づくり」を目指して、日夜消防業務に取り組んでいる。
隠岐島は、島根半島の北東約四〇〜八〇kmの日本海上に浮かぶ四つの住民島とその周辺に点在する一八○余の小島から成っている。昭和三五年、大山隠岐国立公園に指定され、後鳥羽・後醍醐両帝の行在所跡をはじめとする史跡と伝説、紺碧の日本海に映える緑豊かな島々は「とって隠岐の宝島」をキャッチフレーズに観光客も多く、また、磯釣りのメッカとして太公望に人気の高い島である。
隠岐島への交通機関は、大阪・米子及び出雲からの飛行機(三往復六便)と鳥取県境港・島根県七類港からのフェリー、時速八○kmのスピードを誇る水中翼船(四往復八便)が確保されている。
管内の中心地となっている西郷町は、明治二一年一一月二〇日、夕方に発生した火災で、町内の約七〇%に当たる七五八棟を焼失する大火を経験している。以来、毎年一一月二一日に町内の諾浦神社に於いて、関係者参集のもと「鎮火祭」を行い、時代とともに薄れがちな歴史・文化の伝承と防火の重要性を訴え続けている。
また、管内は四つの島に署所が分散配置されており、少数精鋭の署所にとっては特に地元消防団との連携は極めて大切である。このため訓練は勿論、各種行事にも積極的に参加し、相互の意志疎通と有事即応体制の確立を図っている。
予防面では、毎年実施される火災予防運動に合わせ、その年々の人気キャラクターを題材に職員が創意工夫して、業務の合間に作成した防火マスコット(張り子)のコンクールを実施し、島民に防火を呼びかけている。予防運動の役目を終えた作品は、管内の保育所で待つ幼年消防クラブ員の元へ引っ越し、新任地においても地域住民の防火意識の高揚を図ることとしている。
また、この期間中は婦人防火クラブ員・社会福祉協議会等の協力を得ながら、ひとり暮らしの高齢者家庭の一人ひとりとの触れ合いを重点に防火診断を実施し、安心して生活のできる環境づくりに取り組んでいる。
この婦人防火クラブは、「防火意識はまず台所をあずかる婦人から」を合言葉に、昭和三二年に婦人消防隊として結成され、以来、数々の行事に参加している。中でも昭和六〇年「全国婦人消防操法大会」の第一回大会に島根県代表として出場するとともに、初代隊長が第一三期防災博士に選ばれる等、地域に密着した組織として、幼年消防クラブ員とともに、人員の少ない当本部にとっては頼もしい味方である。このため、更なる組織の拡大を図るべく、地域の防火座談会・消火訓練等の機会を捉え積極的に働きかけている。
おわりに
全国的な傾向でもあるが、特に管内は過疎化が進展する反面、核家族化も急増し、高齢者及びひとり暮らし高齢者家庭が増加の一途をたどっている。平成七年末現在、総人口に占める割合は実に二六・七%に達し、この内ひとり暮らし高齢者家庭は一六・五%を占める状況にあり、災害弱者の防火安全対策が、今後の予防行政にとって大きなウェートを占めてくるといっても過言ではない。
災害弱者を悲惨な火災からまもるために、様々な行政施策が検討されているが、組合構成町村が一体となった施策(緊急通報システム等の導入)を樹立し、地域住民との連携を図りながら、それぞれの役割り分担を通じ、共助の精神で日常生活における安全の確保を最重点に「火災の無い安全な街づくり」に官民一体となって取り組んで行くつもりである。
(土築啓一)

 

 

 

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